研究課題
高圧処理は、加熱に代わる新たな食品加工技術として,近年,世界中で注目されている技術であり、水などの液体を介して100MPa以上の圧力をかける日本において提唱された新技術である。食肉科学分野でも食肉の軟化促進を引き起こし、筋原線維タンパク質の変化に伴う軟化効果がその要因であることが示されたが、筋肉内結合組織に及ぼす高圧処理の影響については全くわかっていない本研究は高圧処理による筋肉内結合組織の軟化メカニズムの解明を目的とし、昨年度の結果から高圧処理が筋肉内コラーゲン線維の熱的および構造的脆弱化を引き起こすことで筋肉内結合組織の軟化を誘導することが示唆されたので、本年度は、筋肉内コラーゲン分子挙動に及ぼす高圧処理の影響を検討した。得られた結果の大要は以下の通りである。(1)SDS-PAGEおよびNative-PAGEから、高圧処理は筋肉内コラーゲン分子のサブユニットへの解離や分解を伴わないことが確かめられた。(2)CDスペクトルおよび蛍光スペクトル解析から、加圧中のコラーゲン分子の2次および3次構造の変化は認められたが、圧力解放後には再びもとに戻った。したがって高圧処理はコラーゲン分子構造の不可逆的変性を引きこさないことが示された。(3)コラーゲンペプチド遊離試験からも高圧処理に伴うコラーゲン分子のペプチド化は示されなかったが、コラーゲン線維からのタンパク態コラーゲンの遊離が認められた。以上の結果は、高圧処理は、コラーゲン分子を変性・分解するのではなく、コラーゲン分子の会合状況を変化・脆弱化させることを示唆する。
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http://researchers.adm.niigata-u.ac.jp/R/staff/?userld=612