研究概要 |
高圧処理は、加熱に代わる新たな食品加工技術として,近年,世界中で注目されている技術であり、水などの液体を介して100 MPa以上の圧力をかける日本において提唱された新技術である。食肉科学分野でも食肉の軟化促進を引き起こし、筋原線維タンパク質の変化に伴う軟化効果がその要因であることが示されたが、筋肉内結合組織に及ぼす高圧処理の影響については全くわかっていない。本研究は高圧処理による筋肉内結合組織の軟化メカニズムの解明を目的とし、これまでの結果から高圧処理が筋肉内コラーゲン分子を変性・分解するのではないことが示され、高圧処理に伴う筋肉内結合組織の脆弱化にはむしろコラーゲン分子の会合状態の変化・脆弱化が関与することが推定されたので、本年度はコラーゲン分子およびコラーゲン細線維の会合状態に及ぼす高圧処理の影響を検討した。得られた結果の大要は以下の通りである。 (1)In vitroコラーゲン細線維形成に及ぼす高圧処理の影響を検討したところ、200 MPa以下の圧力はコラーゲン分子の自己会合を抑制し、300 MPa以上の圧力では自己会合を促進した。 (2)コラーゲン分子の会合後の圧力処理は、コラーゲン細線維の集合を促進した。 (3)形成したコラーゲン細線維に高圧処理を行うと、コラーゲン細線維間の間隙が大きくなり、高圧処理に伴う筋肉内コラーゲン線維構造の脆弱化とよく対応した。 以上,これまでの結果から、高圧処理に伴う筋肉内結合組織の脆弱化は、内在性酵素によるコラーゲン分子の分解ではなく、コラーゲン細線維の会合状態の脆弱化が関与するものであり、これにはコラーゲン細線維間を接着している物質の遊離もしくは分解が関係するものと推察された。
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