研究概要 |
1. 外来牧草の有害雑草化リスクを低減し,適切に栽培・利用するには,その侵入状況を精査することが不可欠である。そこで,ライグラス類をモデル植物として,高精度分布調査法の開発およびエンドファイト感染の分布状況の調査を行った。ライグラス類はエンドファイトと共生しうるが,これによって侵入性の強化が起こる可能性があると懸念されている。そのため,野生化集団のエンドファイト感染状況と,感染・非感染に関与しうる生態的要因に注目して研究した。 2. 前年度に引き続き,静岡県安倍川を調査地に定め,GPSを活用してライグラス類野生化集団のマッピング作業を行い,高精度分布調査法の改良を重ねた。さらに新たに10集団について,エンドファイト感染状況を調べた。前年度と同様に,冠水を受けやすい場所の集団の感染個体率がやや低い傾向にあった。さらに垂直伝播効率を調べたところ,これまでに報告されている数値を下回る垂直伝播効率を示す個体のあることが確認された。冠水を受けやすい場所では,垂直伝播効率の個体間変異が大きい傾向にあった。 3. 前年度に引き続き,エンドファイト感染種子と非感染種子を用いて,種子食昆虫による採食実験を行った。前年度と同様に,感染種子の採食量が非感染種子より少ない傾向にあることが観察された。一方,安倍川の河川敷にて種子採食実験を行うための準備を進めた。河原に種子カードを設置し,種子消失率を調べたところ,極めて高いことが観察された。 4. 前年度に引き続き,エンドファイトおよび生態リスク研究分野の最新情報を収集・整理した。
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