本研究は、熟成中の食肉軟化を誘起するパラトロポミオシンが、筋細胞内Ca^<2+>濃度増加に伴いサルコメアA-I接合部のコネクチンから遊離する機構の解明を目的としている。本年度は、パラトロポミオシンが結合するサルコメアA-I接合部領域のコネクチン断片を遺伝子工学的手法で作製することを行った。その結果、以下に示すように実施計画をほぼ達成した。 1.先ず鶏胸筋からTotal RNAを調製し、サルコメアA-I接合部をコードするコネクチンcDNAを合成した。cDNAを鋳型にPCR法でA-I接合部の4種類の4~5連続ドメインコネクチン断片をコードするI44-I47、I47-I51、I64-I67およびI64-A1 DNA断片を増幅した。電気泳動法で各質量サイズの泳動位置にバンドを認めた。 2.精製したDNA断片をpGEX6p vectorに挿入し、大腸菌DH5α株を形質転換後、vectorに挿入した遺伝子の塩基配列をDNAシーケンサーで確認した結果、目的のDNAであることを確認した。従って、鶏サルコメアA-I接合部を構成するコネクチンI44-I47、I47-I51、I64-I67およびI64-A1のDNAクローニングと発現プラスミドの構築に成功した。 3.構築した発現プラスミドで大腸菌Origami(DE3)株を形質転換した。IPTGによる発現誘導をSDS-PAGEで検討した結果、I44-I47は約65kDaに、I47-I51およびI64-I67は約75kDaに、I64-A1は約85kDaにバンドを確認した。 4.発現誘導後の大腸菌を超音波破砕後遠心分離し、上清にグルタチオンビーズを加えて洗浄後、SDS-PAGEに供した。その結果、精製した各GST融合組換えコネクチン断片のバンドをIPTG発現誘導時と同じ位置に確認した。
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