研究概要 |
生態系の炭素貯留能(CO_2固定能)は生態系タイプによって異なり,地域や気象要因によってさまざまに変動する点で,その評価の不確実性が高い。不確実性を克服することによって,地球上の炭素循環におけるミッシングシンクを明らかにすることができる。また,地球温暖化問題に関して京都議定書では,CO_2放出量削減策の対象として森林生態系のCO_2固定能に着目してきたが,ポスト京都議定書,すなわち将来の温室効果ガス削減策を考慮するにあたっては,非森林生態系の炭素貯留能を解明することが世界的に緊急性の高い研究課題になると予想される。草原の炭素貯留能は年によって異なることから(ただし具体的要因は不明。Yazakiら2004),気象要因の年々変動によって,炭素貯留能がシンクにもソースにも変動する可能性がある(関川未発表)。本研究は,半自然ススキ草原(長野県菅平高原)を対象として,炭素貯留に対する環境要因の作用メカニズムを明らかにすることを目的とする。草原植物の生育期間中,以下の項目について毎月1回数日間の測定,ないし連続的に自動モニタリングを行った。測定項目は,全天画像解析による地上部葉群の成長(CO_2吸収),通気式-赤外線分析法による土壌からのCO_2放出,および地温・土壌水分・土壌CO_2濃度などの土壌環境要因である。また採取した土壌を用い,微生物の組成を分析中である(蛍光顕微的手法および遺伝子解析)。これらの結果に基づいて上記草原の炭素貯留パターンに対する,とくに冬期から草原植物の成育開始期の降雪・降水による土壌水分と日射量などの影響を解析中である。次年度は,これらの測定・分析を継続するとともに,土壌の物理化学性(ガス拡散特性,CN分析など),微生物活性(呼吸の温度特性)などを分析する予定である。
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