本研究は生活習慣病予防や病態の軽減に有効な機能性チーズ創製を最終目標としている研究である。本年度はチーズを材料に老化や生活習慣病に関与する活性酸素やフリーラジカル等の消去をもたらす成分に焦点をあて研究した。 1.チーズの抗酸化およびラジカル消去活性 各種チーズ12種類のβカロテン退色法による抗酸化活性およびDPPHラジカル消去活性について調べた。その結果、抗酸化活性はいずれのチーズでも見出されたが、特にブルーチーズが高かった。ラジカル消去活性は同チーズに高く、ゴーダ等の乳酸菌熟成チーズは低かった。 2.ブルーチーズの抗酸化成分とDPPHラジカル消去成分の分離およびその構造 高い活性が認められたブルーチーズから、抗酸化成分を分離した。その結果、IH、GIH、DKHY、PGPIH、DKIHPおよびFQ_PS(フォスホセリン)EEの構造を有する6種類の抗酸化ペプチドを見出した。前者5種類は全てHを含むイミダゾールペプチドで、FQ_PSEEはフォスホセリンを有するフォスホペプチドであった。次いでDPPHラジカル消去成分について調べたところ、消去成分として尿酸が明らかにされた。また、ペプチドと考えられる成分も示された。 3.ブルーチーズに使用されるPenicillium roquefortiのプロテアーゼを調べたところ、本菌はメタルプロテアーゼを生産し、抗酸化ペプチドを生成した。 4.以上の結果より、ブルーチーズには老化や生活習慣病に関与する活性酸素やフリーラジカル等の消去能を有するペプチドの存在が明らかにされ、また抗酸化ペプチドの生成にはPen.roquefortiのメタルプロテアーゼの関与が示唆された。従って、機能性チーズ創製の一つとして、ブルーチーズに使用されるPen.roquefortiのプロテアーゼを利用した機能性(抗酸化)チーズの開発が考えられ、貴重な知見を得ることができた。
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