本研究は生活習慣病予防や病態の軽減に有効な機能性チーズ創製を最終目標としている研究である。本年度は、昨年度見出したブルーチーズに存在するDPPHラジカル消去成分について明らかにした。 1.ブルーチーズ熟成中のDPPHラジカル消去成分 ブルータイプチーズ熟成中のDPPHラジカル消去活性について調べた。熟成の異なる70%SN画分におけるEC_<50>および全活性は熟成とともに上昇し、この結果は本チーズのDPPHラジカル消去活性成分は熟成中に生成されるものであることが示唆された。各熟成チーズの70%エタノール可溶性画分をダイアイオンHP-20で分離したところ、活性は未吸着と吸着画分の両者に認められ、両画分は熟成とともに活性が上昇した。両画分をそれぞれHW-40ゲルろ過クロマトグラフィーにより活性画分を分離したところ、熟成0ヵ月では活性画分はほとんど見出されなかったが、熟成2ヵ月では未吸着画分に1ヶ所、吸着画分に2ヶ所の活性画分が溶出した。以上の結果から、本チーズには少なくとも分子量の異なる3種類のDPPHラジカル消去活性成分が存在することが明らかとなった。 2.ブルーチーズDIAION HP-20吸着画分からの活性成分の分離精製およびその構造 1で調整された熟成2ヵ月ブルーチーズの7DIAION HP-20吸着画から各種クロマトグラフィーによりDPPHラジカル消去活性成分を分離・精製し、その構造を明らかにした。その結果、ホモゲンチジン酸(HGA)およびホモプロトカテク酸(DOPAC)が見出された。市販品のHGAおよびDOPACを用いて、ラジカル消去活性を既知抗酸化成分(カテキン、Trolox、BHT)と比較した。その結果、DOPAC>カテキン>HGA>Trolox>BHTの順に活性が示された。従って、チーズ中に見出されたHGAおよびDOPACは高いラジカル消去活性化合物であることが知られた。チーズに抗酸化成分としてこれらポリフェノールが見出されたのは本研究が最初である。
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