豚ふん尿の液状コンポスト化過程では、有機物分解が活発な時期にBacillus属に近縁な細菌が優占化することが報告されている。しかし特定の細菌が普遍的に存在し、液状コンポスト化過程で優占化しているかは明らかでない。そこで本研究では、地理的に隔離された国内4箇所(北海道、茨城、岡山および熊本)の農場の豚ふんサンプルを用いて液状コンポスト化を行い、ふん尿中の有機成分の分解過程における炭素・窒素成分の動態を測定するとともに、有機物分解が活発に起きている時期の優占菌の系統学的分類とその存在比を16S rRNA遺伝子のクローン解析により実施した。 有機物分解が活発な時期に得られた各サンプルの全クローンに対して30%以上の構成比を示した菌種は、Bacillus属、Comamonas属、またはIgnatzschineria属であり、2箇所の農場サンプルにおいてはBacillus属とComamonas属が、1箇所のサンプルについてはComamonas属とIgnatzschineria属が、残りの1箇所についてはIgnatzshineria属を主体とした群集構成が認められた。興味深いことに、これらクローンの配列は、地理的に隔離されているのにもかかわらず99%以上の相同性をもつものが多く、ふん尿サンプルの由来は異なっても液状コンポスト化過程で優占化する細菌は系統分類学的に近似していることが示された。 4つの豚ふん尿サンプルを等量ずつ混合し、基質量と種菌量を平準化した豚ふんについて液状コンポスト化した結果、Ignatzschineria属の優占は認められず、Bacillus嘱やComamonas属を中心とした群集が構成されたことから、これらの細菌はコンポスト化過程での競合に強い生理学的特性を備えているものと考えられた。次年度以降は、これらの菌の単離および機能解析を進める予定である。
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