豚ふん尿の液状コンポスト過程では、有機物分解が活発な時期にバチルス属に近縁な細菌が優占化することが報告されている。この時期には低級脂肪酸をはじめとした悪臭物質の低下や大腸菌などの有害微生物の死滅も促進されることから、これら細菌の優占化は環境負荷低減に重要な役割を果たしていると考えられる。本年は、優占菌の単離を目的とし、昨年実施した4箇所の養豚事業所から採取した豚糞のうち、優占化が最も顕著であった糞尿を再度試料とし、標準通気および高通気の2段階の通気処理における微生物群集の動態解析と、コンポスト過程で採取したサンプルより優占菌の単離を試みた。 高通気処理は有機物分解も速やかであり、バチルス属細菌の優占化も早い時期に認められたが、分解性有機物の消失とともに直ちに群集構造が変化した。標準通気処理の有機物分解は相対的に緩やかであったが、同様にバチルス属細菌の優占化が確認された。有機物分解が活発な時の微生物群集プロファイルは両者とも近似しており、通気量の増大は有機物分解速度に及ぼす影響は大きいものの、群集構造に及ぼす影響は小さく、ふん尿中の基質の利用性に優れた細菌が優占化しているものと考えられた。 優占菌の単離は(1)Nutrient Agar、(2)酢酸添加Nutrient Agar、(3)豚ふん尿寒天培地を用い、好気培養または微好気培養によって実施した。1プレート当たり得られた菌数は(3)>(2)>(1)の順に多い傾向にあった。各プレート上の最大希釈倍率で得られた98コロニーを単離し、16SrRNA遺伝子の配列に基づく分類を行ったが、微生物群集解析で優占が認められたバチルス属細菌と同一の配列を持つ単離菌は得られなかった。単離菌の大部分はバークホルデリア目、シュードモナス目およびバチルス目に属しており、うちバチルス目細菌の配列はSolibacillus silvestrisに相同性が高いものが多かった。
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