豚ふん尿の液状コンポスト過程では、有機物分解が活発な時期にBacillus属に近縁な細菌の著しい優占化が認められる。この優占菌の性状を明らかにする目的で、通気条件下にある豚ふん尿から優占菌の単離を試みた。 これまでに寒天培地にふん尿成分を添加することで、平板上に現れるコロニー数が増加することが確認されている。 本年は、オートクレープ処理をしない濾過滅菌ふん尿を主成分とする寒天培地を用いてサンプルの接種を行った。コロニーを形成が確認された最大希釈倍率のプレート上のコロニーを単離し、16SrRNA遺伝子配列に基づく分類を行った。単離菌はバークホルデリア目、バチルス目が殆ど占め、うちバチルス目ではSolibacillus属、Kurthia属、Caryophanon属の細菌が大部分を占めたが、細菌群集解析で優占が認められたBacillus属細菌と同一の配列を持つ単離菌は得られなかった。続いて96穴マイクロプレートのウェルに濾過滅菌ふん尿を分注、限外希釈したサンプルの接種により優占菌の単離を試みた。振盪培養24h後に濾過滅菌ふん尿の濁度が上昇したウェルについて菌体を回収し、16SrRNA遺伝子配列を解析したが、すべてバークホルデリア目Comamonas属に近縁な細菌であった。 優占菌の基質を明らかにするため、ふん中の代表的な炭素源の1つである菌体に着目し、^<13>C標識-グルコースを唯一の炭素源として増殖した大腸菌を熱処理して得られた死菌体を基質としたSIP(Stable Isotope Probing)法を実施した。本法は^<13>C標識された炭素基質を自身の体内に取り込んだ菌を特異的に検出する方法である。^<13>Cラベルした大腸菌死菌体を液状コンポストに投入後6h経過したサンプルについて解析を行った結果、Acholeplasma属に近縁な細菌が死菌体の資化に関与していることが明らかとなった。
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