卵子の成熟動態については、体外成熟・体外受精モデルを用い、第二減数分裂中期(MII期)到達後の精子侵入・受精時期と発生能を調べ、精子侵入(受精)時期を指標にしたMII期卵子の発生能について解析を行った結果、発生能獲得期(発生能向上期:MII到達0~7時間後)、成熟期(高発生能維持期 : 8~16時間後)、老化期(発生能低下・喪失期 : 17~25時間後)を特定、解析中の各期の卵子機能特性を指標にした体内成熟動態の解明が可能になった。また、超音波ガイド法により採取した体内成熟卵子と体外成熟卵子の発生能と超微形態(ミトコンドリアと表層顆粒の分布)を調べた結果、卵胞刺激ホルモン処置後に採取して体外成熟させた卵子は体内成熟卵子に近似する発生能と超微形態を示すことから、体内成熟卵子のモデルとして活用できることが明らかになった。さらに、発育途上の初期胞状卵胞の個別発育・成熟培養法について検討、体内発育・体外成熟卵子に近い発生能を有する卵子が生産可能な培養系(マイクロウェルを用い、発育培養12日、イソブチル・メチルキサンチン添加培地で成熟前培養1日)を開発、体外発育過程から各種ストレス(高泌乳、暑熱など)による卵子成熟動態への影響の検討(不受胎、低受胎の原因究明)にも利用可能になった。 受精動態については、搾乳牛を用い、人工授精後6時間間隔で排卵時期を超音波診断装置で調べるとともに、授精一排卵間隔と受胎成績の関係を解析した。その結果、授精後6時間以内の排卵あるいは24時間以降の排卵では受胎率が低下することから、受精成立に必要な数の精子が卵管に移送・貯蔵されるためには、少なくとも6~12時間を要すること、排卵卵子は12時間以降老化すること、貯蔵精子は授精30~36時間以降に減少することが明らかになり、受精動態異常の解明に役立つ指標が得られた。
|