研究概要 |
平成21年度の研究結果は以下のとおりである。 1.哺乳動物卵におけるモータータンパク質キネシンの機能的役割 ブタ卵母細胞の成熟過程におけるキネシンの分布変化を検討したところ,微小管の分布変化に同調し,MI期およびMII期において紡錘体が存在する領域に集中する卵の割合が増え,細胞質内のキネシンの濃度勾配が観察された。また,KIF5AはGV内において高密度に分布しており,mRNAの輸送に関与しているものと推察された。 2.哺乳動物卵におけるミオシン軽鎖キナーゼの機能的役割 ブタ卵母細胞の成熟培地にミオシン軽鎖キナーゼ阻害剤を添加して,その影響を検討したところ,ミオシン軽鎖キナーゼ阻害の影響はGV-MI期には認められないが,MI-MII期のうちのAI-TI期の卵母細胞成熟の進行に影響すること,MI-MII期のマイクロフィラメント重合/脱重合に影響していること,さらに第一極体放出に影響していることが明らかとなった。これに対し,GVBDおよび紡錘体の卵母細胞表層への移動や回転には影響しないことが明らかとなった。 3.ハムスター卵母細胞並びに初期胚におけるケラチンの分布 卵母細胞の成熟過程における中間径フィラメント,ケラチンの分布について検討した。その結果,未成熟な卵母細胞では集塊状の非繊維性ケラチンが細胞質の表層域に分布していたが,成熟後の卵母細胞では繊維性のケラチンが細胞質全域に分配された。初期胚では,ケラチンは胚細胞緊密化(コンパクション)が開始する8細胞期に割球の接着面に集中し始め,コンパクション時には割球接着面に高密度に分布していた。
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