研究概要 |
平成22年度の研究結果は以下のとおりである。 1.ハムスター卵の成熟に伴う中間径フィラメント-ケラチンの分布変化 卵母細胞の成熟過程における中間径フィラメント,ケラチンの分布について検討した。その結果,未成熟な卵母細胞では集塊状の非繊維性ケラチンが細胞質の表層域に分布していたが,第2減数分裂(MII)期の卵母細胞では繊維性のケラチンが細胞質全域に分配されると共に,表層域に極太のケラチン繊維の形成が開始していた。 2.ブタ卵の成熟に伴う中間径フィラメント-ケラチンの分布変化 ブタ卵では,卵核胞(GV)期では非繊維状のケラチン・シグナルが卵細胞質全体に分布して認められるが,第1減数分裂中期(MI期)及び第2減数分裂中期(MII期)に進行するに従って,ケラチンは繊維化し,かつ明瞭なメッシュ構造を形成していた。このケラチンの分布変化は排卵卵子の物理的な強度を補強する細胞骨格の変化を示すもので有り,家畜卵では初めて観察された所見である。 3.ブタ卵におけるモータータンパク質-ミオシンの分布変 GV期では細胞膜付近にほぼ均一に存在していたミオシンが,MI期からMII期にかけて局在が変化し特定の部位の細胞膜付近に厚い層を形成して,ここを中心として三日月状の分布を示した。この中心部位におけるミオシンの厚さと囲卵腔の大きさの相関が高いので,ミオシンの集中することが囲卵腔を形成する要因と考えられた。細胞膜直下にはマイクロフィラメントが分布するので,ブタ卵母細胞においてもマイクロフィラメントとミオシンとの相互作用により,細胞質に収縮性の変化が生じ,囲卵腔を形成するものと推察された。
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