筋紡錘は伸張反射によりI型筋線維と単シナプス的に連携していることから、I型筋線維の機能的特性に大きく関連している。筋収縮は運動神経の刺激により筋小胞体からカルシウムイオンが放出されることで起こり、筋弛緩時には筋小胞体カルシウムポンプ(SERCA)によってカルシウムが回収される。SERCAには遅筋型と速筋型があり、I型筋線維を誘導する持続的低周波電気刺激(CLFS)を行なったウシ胸最長筋のSERCA発現を解析したところ、CLFS刺激下のII型筋線維では筋線維型変移過程で遅筋型ミオシン重鎖の発現上昇に追随して遅筋型SERCAが発現上昇することが分かった。また、この時、I型筋線維でも遅筋型SERCAの発現上昇が認められ、CLFSによる筋運動負荷に1型筋線維が機能的に適応することも明らかとなった。このことは反鯛動物に存在するI型筋線維の疲労耐性の高い亜型との関連が示唆され、筋紡錘の関与も推測される。 また、筋紡錘分布の3次元解析に供するため、草原短角牛(ミオスタチン欠損日本短角種DM牛)の新生子3頭(MSTN^<-/->)と14ヶ月齢(MSTN^<+/->)6頭、ホルスタイン種牛4ヶ月齢(MSTN^<+/+>)3頭より筋材料を採取し、新鮮凍結およびホルマリン固定サンプルを得た。前年度採取の日本短角種牛(MSTN^<+/+>)12頭、ホルスタイン種牛(MSTN^<+/+>)18頭の筋材料と併せ、酵素組織学的および免疫組織化学的に解析を進め、また、有用な3次元解析法を検討していたが、東日本大震災の被災により上記の凍結試料はすべて融解滅失し、プレパラートやデータの一部も失われた。一方、ホルマリン固定試料の一部は保持されたので、次年度には新規の採枕とこれらの試料によって筋紡錘3次元解析を実施する予定である。 なお、本年度の日本畜産学会大会が中止となったため、演題登録していた関連成果4演題が未発表扱いとなった。
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