研究課題
申請者は、ラット甲状腺由来正常細胞FRTL-5をIGF-Iで刺激しても生理活性である細胞増殖はほとんど誘導されないが。甲状腺刺激ホルモンTSHで前処理しておくことによって、IGF-Iによって誘導される細胞増殖が相乗的に増強されることを明らかにしてきた。他のIGF-I標的細胞でも同様な現象が認められることから、IGF-Iは生理活性を発揮するためのホルモンであり、TSHなどのトロピックホルモンが細胞の運命・性質・方向性を決定づけること(プライミングと呼ぶ)によって初めて、IGF-Iが組織特有の機能を発揮することが可能になる、と考えられた。さらに、TSHによるプライミングの分子機構を解明していく過程で、PI 3-kinaseと結合する新規タンパク質、PITKAPの精製、同定に成功した。このタンパク質を発現抑制するとTSHによるプライミング効果が認められなくなったため、PITKAPが細胞のプライミングに必須な機能を果たしていることが明らかとなった。そこで、本研究ではPITKAPが甲状腺細胞をプライミングする分子機構を解明し、さらに、ノックアウトマウスを作製することで動物個体での機能を解明することが目標である。本年度はPITKAPの細胞内での局在について検討を加えた。まず、PITKAPの細胞内での局在を免疫染色によって解析した。その結果、PITKAPは細胞内でアクチン繊維とよく共局在することが明らかとなった。次にアクチンとの結合を検討したところ、PITKAPはC末端側の領域で繊維状アクチンと結合することが明らかとなった。さらにPITKAPはアクチンと結合することによってアクチン繊維の束化を促進する活性を有することが明らかになった。最後にアクチンと結合し、アクチン束化促進活性に必要なPITKAPのC末端領域を欠いた変異体の細胞内局在を観察したところ、アクチン繊維とは共局在しないことがわかった。今後はアクチンとの結合がPITKAPのIGF-I生理活性増強活性における生理的意義について検討を加えていきたい。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Biochem.Biophys.Res.Commun. (in press)
J.Clin.Biochem.Nutr. 46
ページ: 157-167
Endocrine Journal 56
ページ: 561-570
http://endo.ar.a.u-tokyo.ac.jp/lab/index.html