研究課題
我々は、ラット甲状腺由来正常細胞FRTL5を甲状腺刺激ホルモンTSHで前処理しておくことによって、細胞になんらかのプライミングが起こり、IGFIによって誘導される細胞増殖が相乗的に増強されることを明らかにしてきた。さらに、TSHによるプライミングの分子機構を解明していく過程で、PI3kinaseと結合する新規タンパク質、PITKAPの精製、同定に成功した。このタンパク質を発現抑制した際にプライミング効果が失われることから、PITKAPが細胞のプライミングに必須な機能を果たしていることが明らかとなった。そこで、本研究ではPITKAPが甲状腺細胞をプライミングする分子機構を解明し、さらに、ノックアウトマウスを作製することで動物個体での機能を解明することが目標である。本年度はPITKAP遺伝子が臓器特異的に欠損したマウスを作成するため、LoxP切断部位を導入したターゲティングベクターを構築した。LoxP配列はマウスのPITKAP遺伝子のinitiation codonを含むExonを欠失するように挿入した。LoxP導入マウスの作製は既に完了し、現在は全身にCreを発現するマウスと上記LoxP導入マウスを交配し、全身のPITKAP遺伝子をノックアウトしたマウスを作製を試みている。このマウスの発生・成長・成熟・老化・内分泌指標・および臓器の発達などの表現型を調べ、PITKAPをノックアウトしたために起こった変化を特定する予定である。顕著な表現型が観察されなかった場合には、給餌制限や低タンパク質食、高脂肪食などの負荷をかけて、同様な指標を調べるとともに、時期特異的、臓器特異的なコンディショナルノックアウトマウスの作製を進め、特に甲状腺における機能に注目して解析を進めていく予定である。PITKAPにはPI3K結合ドメイン以外にもアクチン結合ドメインが存在している。本年度はこのドメインがPITKAPによるプライミング活性に果たす役割について検討した。PITKAPの発現抑制によるプライミング不能は野生型PITKAPの再発現によって回復するが、PI3K結合不能変異体にも回復効果が認められた。この結果はPITKAPのPI3Kとの結合はプライミングには必須ではないことを示しており、今後アクチン結合ドメインの変異体を用いてプライミング効果を検証することでPITKAPの全く新しい機能が解明できると期待している。
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