本研究は、成長促進効果を有する「食欲促進ペプチド」、筋肉量増加効果を有する「抗ストレスペプチド」並びに体脂肪量減少効果を有する「抗肥満ペプチド」の3種のペプチドを分散性の高い微粉末として経鼻投与して、ブロイラーの「成長促進」、「筋肉量増加」並びに「体脂肪量減少」の3者を同時に達成することにより鶏肉の生産性を飛躍的に高めようとするものである。本年度の成果は以下の通りである。まず、「食欲促進ペプチド」として、強力な食欲抑制ペプチドであるα-MSHの受容体アンタゴニストを中枢投与したが、摂食量の増加は認められなかった。そこで、ブロイラーの視床下部α-MSH前躯体遺伝子の発現を調べた結果、ブロイラーはその他の鶏種に比べα-MSの発現量が極めて少ないことが明らかになった。このことから、ブロイラーにおいてはα-MSHの産生量が少ない為、アンタゴニストによるα-MSHの阻害効果が表れず、摂食促進効果が認められないことが示唆された。次に、「抗ストレスペプチド」として、ストレスペプチドであるCRFの受容体アンタゴニストを中枢投与した結果、ストレスの指標となる血中副腎皮質ホルモン濃度の低下と摂食量の増加が認められた。このことから、CRFの受容体アンタゴニストは抗ストレス作用と食欲促進作用を併せ持つことが明らかになった。更に、「抗肥満ペプチド」として、脂肪分解促進作用を有するVIPのアナログを中枢投与した結果、血中遊離脂肪酸濃度の上昇と摂食量の減少が認められた。このことから、VIPアナログの抗肥満作用のみを発現させるべく、VIPアナログによる脂肪分解促進機構と食欲抑制機構との関連を解明する必要があると考えられた。最後に、我々が開発したVIPアナログ吸着微粉末を用いてVIPアナログの分散性と安定性の向上をin vivo条件下で調べ、その有効性を確認した。
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