昨年度までの研究成果により、食欲促進による「成長促進」と抗ストレスによる「筋肉量増加」並びに筋肉良増加に基づく「体脂肪量減少」の総てが、CRFの受容体を遮断することによって、達成し得ることが示唆された。しかしながら、ブロイラー雛においては、CRF受容体アンタゴニストの脳室内投与によって認められる効果が鼻腔内投与によっては認められなかったことから、本年度は、この投与経路による効果の違いが、動物種或いは日齢による違いに基づく可能性について明らかにするべく、種々の品種及び日齢の鶏を用いて、CRF受容体アンタゴニストの鼻腔内投与試験を行なった。 その結果、卵用品種のニワトリ雛においては、CRF受容体アンタゴニストの鼻腔内投与は、摂食量の増加、及び、ストレス応答反応の指標となる血中コルチコステロン濃度の低下を引き起こすことが明らかになったが、卵用品種の成鶏、ブロイラーの幼雛並びに出荷日齢に相当する8週齢の若鶏においては、これらの効果は認められなかった。そこで、このようなCRF受容体アンタゴニストによる応答性の相違が、中枢神経系における感受性の相違に基づく可能性について明らかにする目的で、種々の品種及び日齢の鶏の視床下部及び脳下垂体をin vitro条件下で培養し、CRF受容体アンタゴニストによる、CRFの遮断効果について確認した。 その結果、卵用品種の成鶏及び8週齢のブロイラー若鶏においては、CRF受容体アンタゴニストによるCRFの遮断効果が低いことが明らかになった。一方、幼雛時においては、卵用品種及び肉用品種共に、CRF受容体アンタゴニストの効果がin vitro条件下において認められたことから、ブロイラーの幼雛時にCRF受容体アンタゴニストの効果が認められない原因のひとつとして、ブロイラーにおいては鼻腔内から中枢神経系へのペプチドが移行し難いことが示唆された。
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