本研究は、哺乳類の着床機構解明のために、生体の子宮を対象としたRNA干渉法を確立し、妊娠、特に着床に関連した遺伝子機能の解析に応用する事を目的とする。平成21年度は、生体の子宮におけるRNA干渉法を確立すること、および着床期特異的に発現する内因性の遺伝子について、RNA干渉を行う上で必要な情報(発現動態、cDNA配列)に関してより詳細な検索を行うことを目的に研究を進めた。 生体子宮を対象としたRNA干渉法の確立に関しては、HVJ-Eベクターおよびリポフェクとアミンを用いて実験を行ったが、投与した試薬が注射後の膣の穴から流出する等の問題点が見つかり、安定した方法の確立には至らなかった。22年度は、遺伝子導入試薬にF127 pluronic gelを添加し、粘性を持たせる事によって手法の改善を試みる。 着床期特異的に発現する内因性の遺伝子については、形態形成因子であるインディアンヘッジホッグ(Ihh)の解析をラット子宮で行った。その結果、ラット子宮ではIhhの発現が妊娠3.5日から5.5日に高い事を明らかにした。また、卵巣除去ラットとエストロジェンのアンタゴニストを用い、その下流因子であるGli1がエストロジェンの作用によって妊娠5.5日目にはすでに低下している事を実証した。これらの結果は学術論文として投稿済みであり(11.研究発表参照)、生体内子宮のRNA干渉を行う上で重要な知見となった。平成22年度はこれらの情報をもとに、実際に着床期特異的遺伝子のRNA干渉を行う。
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