本研究は、哺乳類の着床機構解明のために、生体の子宮を対象としたRNA干渉法を確立し、妊娠、特に着床に関連した遺伝子機能の解析に応用する事を目的とする。平成23年度は、前年度までに子宮における発現動態の解析を終了している着床期特異的遺伝子、IhhとFoxa2を標的遺伝子として生体子宮におけるRNA干渉法の確立を目的に研究を進めた。 妊娠2.5日目のラット子宮腔内に標的遺伝子のsiRNA、対照区として発現に影響しないcontrol siRNAの導入を試みた。導入試薬としてlipoectamine 2000(LA)、溶媒としてPluronic F-127をPBSに溶解したものを用いた。siRNA導入後6~8日目に開腹し着床数を調べ、それをもとに導入条件を決定した。また、導入後24時間で子宮におけるIhhの遺伝子発現をqPCR法によって調べた。 240pmol以上のsiRNAを子宮腔内に導入したところ、control siRNAを導入した子宮角において着床数の有意な減少が見られた。導入遺伝子量を検索した結果、80pmol以下の子宮では、未処理区の着床数と比べ有意な減少は認められなかった。よって、遺伝子導入量は80pmolとした。この条件でIhh siRNAおよびFoxa2 suRNAを子宮腔内に導入し、それぞれの遺伝子の発現を測定したが、control区とsiRNA導入区での発現量の差はなかった。この原因として、siRNAが子宮組織に導入されていない、導入はできていたが抑制が持続しなかったことが考えられる。これらの結果は、繁殖生理に影響を与えない生体子宮におけるRNA干渉法を確立する上で重要な基盤的知見となる。
|