本研究は、イヌにおけるパピローマウイルス(PV)関連疾患の探索並びにその原因学的・病理学的解析を目的とした研究である。イヌでは、口腔および皮膚の乳頭腫(症)病変の原因ウイルスとして同定されたイヌ口腔乳頭腫症PV(canine oral PV : COPV)が長年に渡って、実際に同定され、全遺伝子長の塩基配列が明らかになっていた唯一のウイルスであった。しかしながら、近年になって、乳頭腫病巣からCOPVとは異なるイヌPV(Canine PV : CPV)2が同定されるとともに、犬色素性表皮母斑としても知られる表皮過誤腫(EH)病変に関連する新規PV(EH原因PV)としてCPV3およびCPV4が同定されている。本年度は、ヒトのPV関連疾患の探索に使用されており、約450bpの産物(L1領域の一部)が得られる汎用プライマーであるMY11/09を用いて申請者らがEH病巣から近年見出した新規EH原因PVのクローニングを行った。また、同ウイルス感染に起因する病変とこれまでに同定されているEH原因PV感染に起因する病変とを病理学的に比較・検討した。その結果、今回新たにクローニングした新規ウイルスが既知のEH原因PVであるCPV3およびCPV4と近縁関係にある新規PVであることを確認した。また、本新規EH原因PVによる病変と既知のEH原因PVによる病変の組織像に差異がないことを確認した。更に、本クローニングデータを参考にして、パラフィンブロックに応用できるPCR法を利用した新たなEH原因ウイルス遺伝子検出系を確立した。
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