研究概要 |
糖質コルテコイド(GC)の活性化/非活性化を仲介する11β-HSD type1(11HSD1)/11β-HSD type2(11HSD2)、およびGCレセプター(GR)の発現とGC代謝について調べた。 ・FSHによる21hの卵母細胞の成熟(IVM)は卵丘細胞における11HSD1mRNA発現を対象区に比べ100倍近く増加させた。FSH処置は11HSD2とGRの発現を5-10倍増加させたが、両者の発現は11HSD1に比較して非常に低かった。 ・膨化した卵丘中に点在する卵丘細胞の細胞質で11HSD1タンパクの発現が確認された。 ・FSH処置により卵丘卵母細胞複合体(COC)の11HSD1リダクターゼ活性の上昇が認められた。 ・ラット顆粒層細胞で11HSD1発現を増加させる事が報告されているIL-1βはウシCOCでこれら因子の発現に影響を与えなかった。 培養液中へのGCが卵母細胞の成熟やCOCの炎症性遺伝子発現に与える影響を調べた。 ・生理的濃度のGC(100nM)は卵母細胞の核成熟に影響を与えなかった。 ・FSH処置によりCOCのPGE2合成酵素(i.e.,cPLA,COX-2,PTGES)の発現が増加したが、GCはこれらの因子の発現に影響を与えなかった。 ・排卵に関与する主要なサイトカインであるIL-1βやケモカインIL-8はウシCOCではほとんど発現が認められなかった。 以上の事から排卵に向かうCOCでは11HSD1によるGCの活性化が亢進するが、卵母細胞の成熟や卵丘膨化に重要な役割を果たすPGE2の生産には影響を与えない事が示唆された。
|