研究概要 |
鳥類大脳の相同性について比較神経解剖学の立場から証明を試みた。今年度はグルタミン酸神経細胞の存在と投射部位を2型小胞性グルタミン酸トランスポーター(vGLUT-2)のin situ hybridization法と免疫組織化学法および線維連絡法で解析した。 1.in situ hybridization法 グルタミン酸作動性神経細胞が末梢神経系から中枢神経系への入力を調べるために、vGLUT-2のmRNAの局在をin situ hybridization法で解析した。vGLUT-2 mRNAは網膜の視神経細胞層と脊髄神経節の神経細胞に強く発現していた。[発表:Exp.Eye Res.89 : 439-443,2009とAnat.Histol.Embryol.38 : 475-478,2009] 2.免疫組織化学 鳩の小胞性グルタミン酸トランスポーター(vGLUT-2)に対するポリクローナル抗体を作製した。vGLUT-2の中枢神経系内の分布を光顕免疫組織学で解析した。VGLUT-2の陽性反応は神経細胞体には観察されず、ニューロピル、数珠状あるいは神経細胞体周囲に点状に見られた。陽性反応は大脳から脊髄まで広く観察され、部位別では強い陽性反応は嗅球、大脳外套の大部分、線条体、背側視床、視床下部、小脳皮質で見られた。視蓋は中等度の陽性反応を示し、特に表層は数珠状の陽性産物が確認できた。脊髄は背角が中等度の陽性を示した。神経細胞体を取り巻く点状の陽性反応は延髄聴覚系の大細胞核と層状核で見られた。[発表:第115回日本解剖学会解剖誌85(Suppl.):191,2010] 3.線維連絡 鳩の後巣外套中間部(NCC)が脳内のどの部位と線維連絡しているかを、標識色素を微量注入することにより解析した。その結果、NCCは内在性回路が豊富に形成され、またNCC以外の大脳では中間中外套背側部、中間巣外套内側部、弓外套と強い線維連絡があった。大脳外へは視床の円形下核、卵形核、後視床核背外側部と連絡している。これらの所見からNCCは中間中外套背側部から大量の入力を受け入れ、弓外套へ出力することが明らかになった。[発表:J.Comp.Neurol.517 : 350-370,2009]
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