【目的】鳥類の大脳外套の投射神経細胞の基本は哺乳類大脳皮質と同様グルタミン酸作動性である。これは2型小胞性グルタミン酸トランスポーター(VGLUT-2)のmRMを利用したin situ hybridization法により明らかにされたものである。この方法ではVGLUT-2発現神経細胞の局在は判定できるが、投射先は分からない。今回はVGLUT-2に対する抗体を用いた免疫組織化学により、鳩中枢神経系に存在するグルタミン酸作動性神経細胞の投射先を解明した。【材料と方法】鳩はペントバルビタールで麻酔後、0.1%グルタールアルデヒド-4%パラホルムアルデヒド混合液で灌流固定を行い、厚さ50μmの凍結切片を作製した。使用したVGLUT-2ポリクローナル抗体は、鳩VGLUT-2アミノ酸配列のC末端側に相当する部位の合成ペプチドを兎に免疫し得たものである。観察は光学顕微鏡と電子顕微鏡を用いて行った。【結果】陽性反応は神経細胞体には観察されず、ニューロピル、数珠状あるいは神経細胞体周囲に点状に見られた。陽性反応は大脳から脊髄まで広く観察され、部位別では強い陽性反応は嗅球、大脳外套の大部分、線条体、背側視床、視床下部、小脳皮質で見られた。視蓋は中等度の陽性反応を示し、特に表層は数珠状の陽性反応産物が確認できた。延髄では神経細胞体を取り巻く点状の陽性反応が延髄聴覚系の大細胞核、角核、層状核で見られた。脊髄は背角が中等度の陽性を示した。電子顕微鏡による観察では、陽性反応は非対称性の前シナプスに局在していた。【結論】以上の観察から、鳩の脳脊髄ではグルタミン酸作動性神経細胞が広範にわたり、多数の部位に投射していることが明らかになった。
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