腫瘍におけるPrP^Cの機能解明を目的として、リアルタイムRT-PCRを用いてヌードマウス移植腫瘍実質におけるヒトPrP遺伝子の発現状況について解析を行った。 用いた13株のヌードマウス移植腫瘍のうち、PrP遺伝子の発現レベルは乳癌MCF7、乳癌KPL3C及び乳癌KPL1において低く、髄膜腫HKBMM、肺癌RERF-LC-KJ、胃癌IGSK2、子宮頸癌HUSEMにおいて高い傾向が認められた。PrP遺伝子の発現レベルは各種腫瘍によって異なる事が明らかとなった。 ヒト正常脳組織においてはPrP遺伝子の発現量は、正常肝組織の約10倍であった。今回用いた移植腫瘍の中でPrP遺伝子の発現が最も高いHKBMMは脳の約0.8倍、肝臓の約8倍であった。一方、今回の研究で最も低い結果が得られたMCF7は脳の0.02倍、肝臓の約0.2倍であった。今回の研究は、ヒト正常脳組織及び肝組織におけるPrP遺伝子発現レベルと、各種腫瘍におけるPrP遺伝子発現レベルとの比較情報を新たに提供した。 卵巣癌2008、子宮頸癌HUSEM、乳癌MCF7の移植前培養細胞におけるPrP遺伝子の発現傾向は、移植腫瘍におけるPrP遺伝子の発現傾向と大幅な変化は見られなかった。移植が腫瘍細胞におけるPrP遺伝子の発現に大きく影響を及ぼしていないと考えられた。 以上の成績から、本研究ではヒト13腫瘍細胞株におけるPrP遺伝子の発現レベルに関する情報を初めて提供した。今後腫瘍におけるPrPの機能を解明する上で、本研究が提供した情報は有用であると考えられる。
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