研究概要 |
(1)自己免疫疾患の効果相におけるNicheの破壊と,この概念が免疫疾患で普遍的事象であるかどうかについて,自己免疫疾患とその病態が対局にある(2)アレルギー性疾患について,以下の検討を行った。 (1)二次性シェーグレン症候群は様々な自己免疫疾患に随伴して生じる。これらのうち,全身性エリテマトーデスのモデルマウスであるNZBxNZWF1マウスでは,加齢に伴う自己寛容の破綻により多数の自己抗原に対する自己抗体が産生される。これらは,循環血中で免疫複台体を形成後,腎臓の糸球体に沈着し,糸球体腎炎を発し,その結果腎臓病が起る。これらに引続いて,唾液腺・涙腺炎が生じる。これらの組織では,一義的にIgG2aや補体の沈着,Th1型リンパ球の浸潤によりNicheを構成する基底膜や筋上皮細胞の機能・形態的障(傷)害が生じ,その結果腺房炎が生じる事を示唆しだ。従来,シェーグレン症候群は導管・腺房上皮が一義的な標的であると説明されているが,ここで示したように,局所病変の成立過程に,新しい考えを提唱した点で意義がある。さらに,本病の病変形成にはTh1/Th2パラダイムシフトについての論争があるが,Th1優位の反応である事を明らかにする事ができた。(2)遅発型アレルギー性喘息モデルマウスを卵白アルブミンで作製した。感作個体で,再度アレルゲンを暴露された肺の気管支には,好酸球とTh2型リンパ球が浸潤し,上皮に杯細胞の増生と気管支内腔に粘液と剥離上皮の貯留が生じる。一方,アレルゲン非暴露部の腸管では,上皮は傷害を受けず,粘膜固有層のNicheである細静脈を中心に好酸球性細静脈がみられた。肥満細胞の関与はなく,下痢などの臨床症状はみられなかった。Nicheの概念を導入する事で,subclinicalな病態における病変を明らかにする事ができ,アレルゲン非暴露部位の病変形成のメカニズム・病態の研究のbreak throughとなる可能性が高い。(1)および(2)の成果から,免疫疾患では,、Nicheの観点から病変形成のメカニズムの解明が普遍的重要である事を示した。
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