ニワトリのゲノムを解析すると苦味関連遺伝子T2Rsは3種類存在する。これは齧歯類やヒト(40種類程度と考えられている)に比べると著しく少ないと思われる。まず著者らは分子生物学的手法を用いてT2R1、T2R2およびT2R3の3種類のT2Rs受容体遺伝子の発現を味蕾を含む口腔上皮に証明した。味蕾を含まない上皮では発現しないことから、この3種類の苦味関連遺伝子が苦味受容において機能していることを示唆する結果である。次に哺乳類で苦味物質として知られている塩酸キニーネを用いて行動実験を行った。するとニワトリは明らかに塩酸キニーネを忌避していることが明らかになり、苦味として認識ていることが考えられた。最後に味蕾を単離してCa2+イメージング法による解析が可能かを試みた。単離味蕾に研究期間中に作成したニワトリガストデューシン抗体を用いて免疫組織化学法を適用すると明瞭な陽性反応を得た。すなわち、ニワトリ味蕾の単離が可能となった。そこでこの単離味蕾を用いて共焦点レーザー顕微鏡下にCa2+イメージング法を行った。還流液に塩酸キニーネを2回投与すると、投与に応じて明瞭なCa2+濃度上昇反応が得られた。味蕾の全ての細胞が応答反応を示すのではなく、一部の細胞が応答反応を示すことが明らかになった。この現象は、哺乳類と類似するものであった。
|