本研究課題の当初の目的は、肝星細胞に代表される肝臓のコラーゲン産生細胞の分布、活性およびコラーゲン産生能の動物種間における比較を行うことにより、肝臓におけるコラーゲン線維網の形成機構を解明することであった。平成21年度は研究計画として、1)ニワトリ肝臓におけるコラーゲン量と肝星細胞の細胞密度に関する比較検討、ならびに2)初期成長期におけるブタとニワトリの肝星細胞の機能評価の2つを予定していた。1)については、ロードアイランドレッド(RIR)を用いて、肝臓のコラーゲン重量ならびに肝星細胞の分布密度を検討した結果、成鶏では雄が雌よりも肝湿重量に対するコラーゲン線維重量比が大きく、また肝星細胞密度も高いことが明らかとなった。2)に関しては、本年度はブタのサンプルを十分に入手することができなかったため、ニワトリにおける検討が中心となった。その成果の一つとして、ブロイラーの脂肪肝と正常肝におけるコラーゲン線維の発達について検討を行い、第2回日本暖地畜産学会長崎大会においてその成果を発表した。また、次年度の計画として予定していた胚発生過程における肝臓のコラーゲンネットワーク形成の解析についての検討を前倒しして行ったところ、孵卵16~20日にかけての胚の肝臓において肝湿重量に対するコラーゲン線維重量比には雌雄差が認められないこと、発育とともに同重量比が有為に大きくなることが明らかとなり、その成果を日本畜産学会第11回大会において発表した。さらに、一連の研究の過程で肝臓のコラーゲン線維網標本が単離細胞の三次元培養に応用できる可能性が考えられたことから、試験的にニワトリ肝臓より調整したコラーゲン線維標本内でニワトリの腺性下垂体単離細胞を培養した結果、小さいながらも立体的な細胞塊を得るに至ったことから、この標本を用いた培養系の確立が期待される(第34回鳥類内分泌研究会にて発表)。
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