本研究課題の目的は、肝臓のコラーゲン産生細胞である肝星細胞の分布、活性およびコラーゲン産生能の動物種間における比較を行うことにより得られたデータを元に、家畜・家禽の肝臓におけるコラーゲン線維網の形成機構を解明することであった。21年度においてニワトリ肝臓におけるコラーゲン線維量ならびに肝星細胞の分布に関する雌雄差を明らかにしたことを受けて、22年度ではニワトリの胚発生期ならびに孵化後成長期におけるそれら生物学的特徴を雌雄間で比較した。その結果、胚発生過程においては肝臓に含まれるコラーゲン線維量ならびに肝星細胞の分布に関して雌雄間で差は認められず、いずれも発生の進行とともに増加することが明らかとなった。一方、孵化後成長過程においては、それらの変化が雌雄間で異なっており、肝臓組織の単位重量あたりのコラーゲン線維量の割合は雄で増加する傾向に、雌で減少する傾向にあった。また、肝星細胞の分布に関しては雄の場合その面積が有意に増加したのに対し、雌では変化しないことが明らかとなった。これらの研究成果は、それぞれ日本家禽学会2010年度秋季大会と第3回日本暖地畜産学会大分大会において発表を行った。また、発表にはまだ至っていないが、ブロイラーを用いた実験を通して孵化後成長期における雌雄差の原因を考察した結果、ニワトリ肝臓において認められたコラーゲン線維量の雌雄差の出現には肝星細胞によるコラーゲン線維産生に対する雌性ホルモンであるエストラジオールによる抑制作用が考えられ、今後の研究における新たな方向性についての手がかりを得ることが出来た。
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