昨年度までの研究により、ニワトリの肝臓におけるコラーゲン線維の形成機構に関して、その産生細胞である肝星細胞に作用する因子のひとつがエストラジオールであることを予想するに至った。そこで本年度は当初の計画のひとつとしてニワトリ肝臓由来の肝星細胞の培養系を確立し、肝星細胞のコラーゲン線維産生機能に及ぼすエストラジオールの影響を明らかにすることを目的とした。細胞培養に先立ち、肝臓におけるエストロジェンレセプター(ER)を発現する細胞を明らかにするために、ニワトリ肝臓の凍結切片標本において免疫組織化学的にERの検出を試みた。しかしながら、蛍光多重免疫染色の結果、ER免疫陽性部位は肝星細胞に特異的に発現しているわけではないことが確認され、エストラジオールの肝星細胞への直接的な作用を裏付ける結果は得られなかった。このため培養肝星細胞におけるコラーゲン産生に対するエストラジオールの影響の検討を行うには至らなかった。 もう一つの計画であったアルカリ浸軟処理により作製したコラーゲン線維フレームを足場とした細胞培養による三次元培養法を検討したところ、単離細胞をフレーム上にうまく付着させるためにはフレームを設置するディッシュあるいはウェルの底面を十分に覆うことのできるボリュームが必要であり、これが小さい場合には処理の過程で細胞が周囲に脱落しやすくなることが確認された。しかし、ある程度の細胞をコラーゲンフレーム上に捕捉することができたものの、フレーム内において細胞を効率的に増殖させるには至らなかった。なお、本年度における活動として、これまでに得られた研究成果を公表するために日本畜産学会第114回大会等において研究発表を行うとともに、Animal Science Journal誌に2本の研究論文を投稿し、受理されるに至った。
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