VEGFとその受容体の発現動態が細胞増殖やNOSの発現とどのように関係しているのか、また、摂取されたVEGFが消化管内でどのような動態を示すのかについてマウスを用いて免疫組織化学的および生化学的に検索した。得られた結果は以下のように要約される。 1.乳腺の生殖周期におけるVEGFの発現動態を検索したところ、反応強度は妊娠末期と泌乳開始期を最大とする単峰性の有意な変化を示した。また、ウエスタンブロットによる解析では妊娠末期を最大とする単峰性の有意な変化を示した。この変化は細胞増殖および血管透過性と密接に関連していることが示唆された。 2.乳腺の生殖周期におけるVEGFの受容体の動態を検索したところ、VEGFR1の局在は認められなかったが、VEGFR2は血管内皮細胞に発現がみられた。 3.VEGFのメディエーターとして機能するNOを産生するNOSの発現動態を生殖周期で検索したところ、eNOSとnNOSは乳腺上皮の細胞質に局在がみられたが、iNOSは認められなかった。eNOS、nNOSともに妊娠期に最も高く、泌乳中期に最も低く、以後再び高くなったことから、生殖周期におけるNOはeNOSとnNOSにより産生されること、NOが乳腺の分化増殖に関与していることが示唆された。 4.胎仔および新生仔十二指腸におけるVEGFとその受容体の発現動態を検索したところ、VEGFは吸収上皮細胞と腸腺細胞の細胞質に発現し、生後1日目から反応強度が高くなった。VEGFR1は吸収上皮の線状縁に局在がみられ、生後1日目までは強い発現がみられたがこれ以降弱くなった。VEGFR2は血管内皮細胞に局在がみられたが、日齢による変化は認められなかった。
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