乳汁中に含まれるVEGFが新生仔の消化管の血管新生に対して如何なる機能を果たしているのかを解明するために、マウスを用いた実験引き続き継続するとともに、消化管初代培養細胞系の作出を試み、さらにVEGFとNOSの発現動態をネコ乳腺腫瘍組織を用いて解析した。 1.新生仔の消化管におけるVEGFとその受容体の発現動態の解析結果から十二指腸が最も発現が強いことが判明したので、この部位にVEGFを投与して、消化管のVEGFとその受容体の発現動態に及ぼす影響を免疫組織化学的に解析した。その結果、VEGFとVEGFR2の発現には変化が見られなかったが、腺条縁に見られるVEGFR1の発現が20日齢以降有意に減少した。このことから過剰なVEGFはVEGFR1にトラップされ、その機能が抑制されることが示唆された。 2.細胞の分化増殖に及ぼすVEGFとその受容体の影響をより単純な系を用いて評価するために、十二指腸上皮の初代培養細胞系の作出を試みたところ、コラゲナーゼXIとディスパーゼ処理で細胞を回収し、培地にヘパリンを添加することにより、恒常的に細胞を得ることができるようになった。得られた細胞はサイトケラチン陽性を示すことから上皮系であることを確認した。 3.ネコ乳腺腫瘍組織を用いてVEGFとNOSの発現動態と腫瘍のグレードとの関係を免疫組織化学的に解析したところ、VEGFとiNOSの発現はグレードと正の有意な相関を示したが、eNDSは負の相関を示したことから、腫瘍の予後判定にiNOSの発現量が役立つことが示唆された。
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