研究概要 |
当該年度の研究計画は,(1)EphBノックダウンベクターの作製とin vitroにおける効果の検証,(2)ノックダウンベクターのin vivoにおける効果の予備的検証,(3)無腺部と腺胃部の境界領域の胃粘膜上皮の発現と機能解析であった。経過ならびに研究成果を以下に記載する。 1. shRNAベクター:マウスのEphB2, EphB3, EphB4をノックダウンさせるshRNA発現プラスミド(各3種類以上)と野生型(wt)の発現プラスミドを作製した。COS細胞(EphB非発現)にwtEphBとshRNA発現プラスミドを導入してノックダウン効果を検証し,効果の高いshRNAプラスミドの作製が完了した。プラスミドからレンチウイルスに組換えたEphBノックダウンshRNA発現ベクターの作製にも成功した。 2. In vivoでのノックダウン効果の予備的検証:レンチウイルスベクターの正常マウス胃粘膜上皮細胞への感染効果を検証した。EGFPを発現するレンチウイルスベクターを使用して粘膜内投与を行い,クリオスタット切片の蛍光観察で感染効果を評価した。正常な胃粘膜上皮にはレンチウイルスの感染性が非常に低いことが判明したため,ベクターの再検討などin vivo実験の再検討が必要となった。 3. 無腺部・腺胃部の境界領域の胃粘膜上皮:免疫染色により,噴門部に接する重層扁平上皮のEphB2とephrin-B1の発現は,離れた領域と比べ発現パターンが異なり,また,無腺部胃粘膜上皮と接する噴門部の胃粘膜上皮も胃底・胃体部と比べEphB2とephrin-B1の発現パターンが異なっていた。この発現パターンの解析から,境界領域ではEphB2/ephrin-B1のシグナルが発生し,上皮組織の境界形成維持に働く可能性の高いことが推察された。
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