研究概要 |
平成23年度は次の研究を行った。 1.無腺部・腺胃部上皮の境界形成とEphB2/ephrin-B1シグナルに関する研究:ラットとマウス胃の無腺部・腺胃部の境界領域に関して,(1)無腺部のケラチノサイトは噴門部に近づくにつれてephrin-B1発現が低下すること,(2)無腺部に接する噴門部の単層円柱上皮細胞(表面上皮細胞)と噴門部に接する無腺部のケラチノサイトはEphB2を発現し,ephrin-B1発現の低下が始まる部位で発現が消失することを明らかにした。また,無腺部に接する噴門部の表面上皮細胞は他の部位の表面上皮細胞と比べ異なり,(3)Ki67陽性で増殖性を示すこと,(4)Cytokeratin7陽性であること,(5)噴門部に接する無腺部のケラチノサイトはEphB2陽性領域ではCytokeratin6陽性であることを明らかにした。これらの結果から,EphB2/ephrin-B1シグナルが発生する領域は,単層円柱上皮細胞およびケラチノサイトともに特殊な性状を示す細胞であることが示唆された。市販のヒト皮膚の初代培養ケラチノサイトを材料にMTT assayを行った結果,Ephrin-B1-FcでEphBを活性化させたケラチノサイトの増殖は低下傾向を示したため,境界領域の重層扁平上皮の丈が低い原因はその部位で発生するEphB2シグナルによると考えられた。また,EphB2-Fcによるephrin-Bの活性化で細胞の膜退縮が誘導されたため,ephrin-B1シグナルは細胞間の反発シグナルとして働くと考えられた。その後,ラット無腺部ケラチノサイトの初代培養法を確立し,現在,シグナルの働きを調べている。 2.EphBノックダウンウイルスベクターを活用する研究:作製したshRNA発現ベクターのEphBノックダウン効果を感染効率の高い株化細胞で確認したが,胃粘膜上皮細胞への感染性は著しく低く,ベクターを実験に活用することはできなかった。
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