循環器疾患に罹患した動物(臨床例)を題材に、臨床検査データーと血中エンドセリン濃度との関係を客観的に評価し、エンドセリンの循環器疾患における病態マーカーとしての有用性を検討した。 研究対象を(1)心毒性のある抗がん剤(ドキソルビシン)を継続投与している腫瘍罹患犬、(2)実験的肺高血圧モデル犬(肺動脈をビーズで物理的閉塞)とし、超音波診断装置による心機能パラメーターと血中エンドセリン濃度の関係を客観的に評価し、エンドセリンと心機能との関連性を検討した。その結果、 (1)循環器の基礎疾患を持たない犬ではドキソルビシンの継続投与によって心機能および血中エンドセリン濃度の有意な変化は見られなかった。一方、僧房弁逆流などの心臓の基礎疾患を持つ犬では、超音波検査におけるパラメーターの異常が見られる以前より、血中エンドセリンの有意な上昇が見られた。 (2)ビーズを用いた肺高血圧症モデルでは、肺高血圧の進行とともに超音波検査におけるパラメータの異常が見られた。しかしながら、血中エンドセリン濃度変化は見られたものの、心機能の変化と相関はしなかった。 これらの結果より、血中エンドセリン濃度は心疾患早期マーカーになりえる可能性が示された。また、物理的動脈閉塞による肺高血圧症モデルにおいては、肺血管内皮でのエンドセリン産生機序が自然発生例のものと異なる可能性が示唆された。
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