インフルエンザウイルスの遺伝子再集合は、新型インフルエンザウイルスの出現に直接関与する重要な生物学的な現象である。従って、そのメカニズムの解明は、新型インフルエンザウイルスの流行を予測する上で重要な知見となる。本研究課題では、モデルvRNAを用いたVLP作製と蛋白質断片コンプリメンテーションを組み合わせた実験系を構築して、インフルエンザウイルスの増殖においてHA分節遺伝子の維持に影響する要因を、他のウイルスゲノム分節との相互作用の可能性に焦点を当てて解析する。 本年度は、以下の実験を行った。 1.昨年度は蛍光蛋白質を用いて蛋白質断片コンプリメンテーションを行ったが、VLP感染細胞での蛍光蛋白質再構築による蛍光強度が非常に低いことが分かった。その対策として、ルシフェラーゼを用いた蛋白質断片コンプリメンテーションの検出系を構築した。ホタル由来ならびにウミシイタケ由来のルシフェラーゼを断片化し、蛋白質発現による再構築によりルシフェラーゼ活性が検出されることを確認した。 2.断片化蛋白質の再構築による活性の回復効率が非常に低いことから、VLPの各ゲノム分節から発現する蛋白質量をレポータ遺伝子で評価した。その結果、モデルとしているHAとNA分節から発現する蛋白質が10倍程度異なることが示された。この結果から、分節の種類によっては発現する断片化蛋白質の量的なバランスが偏るため再構築の効率が低くなるのではないかと予想された。 3.2の予想から、HAとNAの2分節でコンプリメンテーションを行う予定であった実験計画を全ての8分節に拡張することに変更し、その準備のためにプラスミド構築を行った。 4.2のVLP感染実験からHAとNA分節からの発現量が異なること示された為、他の6分節からの発現強度についても定量的に測定し基礎データを取得する準備をした。
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