研究概要 |
本研究は、北部ベトナムの市場で売られているアヒル卵が保有する移行抗体から、親鳥におけるH5N1亜型鳥インフルエンザウイルス(以下H5N1)の自然感染状況を把握し、食の安全に関する調査を目的とする。昨年度は毎月、ハノイ市内の市場(10市場)から購入したアヒル卵(1市場10個)の卵黄からIgYを精製し、抗H5,H6,H9特異HI抗体保有状況を調べた。現在までに平成22年4月から7月までの合計384検体の解析が終わっている。HI抗体保有率は抗H5が約47%、抗H6が約18%、抗H9が約1.8%であった。 このうち、8192力価以上の高いHI力価を示した検体は抗H5に7検体、抗H6に28検体、抗H9に4検体あった。そして、抗H9特異HI抗体が高い値を示すと抗H5および抗H6特異HI抗体価も交差して高くなる傾向がみられたが、更なるデータ蓄積が必要である。また、国の行政指導で行っているH5N1ワクチン接種については、高い力価を示した7検体を除いて、約50%という抗H5特異HI抗体保有率は自然感染ではなくワクチン由来の可能性が高いと考えられるが、抗H5特異HI抗体の非保有率も50%であり、国の指導が行き届いていないことも浮き彫りになった。これらの結果から、産卵アヒルは食肉アヒルよりも長期間、飼育されるにも関わらず、ワクチン接種が徹底されておらず、インフルエンザ流行地では危険な状態にあることが解った。 本年度は残りの精製IgY検体について、HI試験を行うと共に、毎月、ハノイ市内の市場(10市場)からアヒル卵(1市場10個)を購入し、データの蓄積を継続する。
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