22年度は近畿地方の調査を行ったところ214頭中80頭(37.4%)が陽性で近畿地方においてもイノシシ猟犬の肺吸虫症感染率が高率であることが判明した。感染犬の糞便から得られた虫卵のITS-2領域のシーケンスから検出された肺吸虫卵は、それぞれP.westermani、P.miyazakii、P.ohiraiの特徴を示し、西日本のイノシシ猟犬は国内に分布する可能性のある3種全ての肺吸虫に感染していた。特に、イノシシ生食歴が少ない犬から検出された虫卵はP.westermani以外のものが多い傾向が強かった。また、ビーグル犬3頭を用い、P.ohirai、P.Miyazakii、の2種のメタセルカリア(Mc)を感染させた後、ヘリカルCT装置を使用して病変の経時的変化について検討した。実験犬1(P.ohirai Mc20個)では左前葉に存在した結節は次第に消失し、1週間で消失する浸潤性陰影が頻出した後、右後葉に新たな結節が形成された。実験犬2(P.ohirai Mc4個)では感染初期、肺内に1週間で消失する浸潤性陰影が頻出した後、結節が形成された。実験犬3(P.miyazakii Mc20個)では右後葉に存在した結節は消失し、肺のすりガラス様X線不透過像や1週間で消失する浸潤性陰影が頻出すると同時に気胸の発生も確認された。その後、左後葉に新たな結節が形成された。肺吸虫症の感染初期および結節の消失後、イヌ肺内に頻出する浸潤性陰影は、肺吸虫が宿主肺内を移動する際の物理的傷害や炎症を反映して出現するものと考えられた。また、肺吸虫はイヌ肺内において虫嚢の形成、消失および移動を繰り返し寄生していると考えられた。
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