平成23年度は中国地方の再調査と九州内の猟犬の調査を行なった。中・四国および近畿地方では、抗体保有犬の確認された地域の39.3%(11/28)で2種類以上の肺吸虫型の感染がみられ、混合感染が起こりうる可能性が示唆された。ウェステルマン肺吸虫(Pw)型は、近畿・中国地方の中央部に集中して多数確認された。さらにこの地域において、感染虫種を推定できなかった検体(分類不能型)について、イノシシの生肉摂食によるPw抗原に対する抗体陽性のリスクを解析したところ、オッズ比は8.27であり、他の地域よりも顕著に高く、近畿・中国地方の中央部ではPwが濃厚に分布している可能性が示唆された。なお、Pw型の血清反応を示す犬や、Pw虫卵を排出する犬は四国からは確認できず、過去に報告されている分布状況よりもPwの分布が濃厚ではなくなった可能性が示唆された。一方で、四国地方の犬からは宮崎肺吸虫(Pm)や大平肺吸虫(Po)の虫卵を排出しているものや、血清反応の型分けでもPm型およびPo型の2種がみられたことから、四国地方では少なくともPmおよびPoの2種の生活環が維持されていることが明らかとなった。九州内においても宮崎県に代表されるように依然として高いPw感染率が維持されていることが判明した。
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