研究概要 |
活性化α毒素は366残基のアミノ酸で構成されており、相同性の高いAeromonas hydrophilaのヘモリジンで解明されている結晶構造より高次構造が推測されている。これまでの解析結果から細胞膜貫通領域はK^<203>~Q^<232>であり、アクチンとの結合に関与する細胞質内領域は膜貫通領域からC端側に存在していると考えられる。特に333番目から342番目のアミノ酸領域にトリプトファンに富む特異的な領域が存在しており、何らかの細胞分子と結合している可能性が考えられる。そこで、今年度はこの領域に点変異体を作成し、細胞障害活性を指標として、アクチンあるいは他の細胞分子へのα毒素のトリプトファンに富む領域の結合について解析した。 組換えα毒素遺伝子を鋳型にし、点変異体作成キットを用いて333,337,338,339,340,341,342番目のアミノ酸をアラニン、アルギニンまたはフェニルアラニンに置換した点変異体を作成した。それぞれ大腸菌で発現させ、精製後実験に使用した。W338A, 3W40A, W342Aはいずれも毒素活性が完全に消失した。W338FおよびW342Fは毒素活性が減少したがW340Fは活性を保持していた。339番目のアスパラギン酸はリジンに変異させ電荷を変えた時のみ活性が減少した。その他のアミノ酸置換では活性に変化は見られなかった。Toxin overlay assayでの、点変異体の細胞可溶性分子への結合解析において、毒素活性が減少した変異体にのみ結合が見られなかった。以上のことから338および342番目のトリプトファン、340番目の疎水性アミノ酸、339番目の負電荷アミノ酸の存在が毒素活性および細胞構成分子との結合に重要であることが明らかとなった。しかしトリプトファンに富む領域のいずれのアミノ酸もアクチンとの結合には関与しなかった。
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