研究課題
近年、乳腺上皮細胞と免疫担当細胞には、互いを認識する細胞表面分子が存在し、これらを介した機能的相互作用が乳腺免疫において重要であることが報告された。このことは、単離細胞を用いた従来の研究手法には一定の限界点が存在することを強く示唆したものである。しかし、一方で細胞間の相互作用をも考慮し得る有効な乳房炎の研究モデルは未だ確立されていないのも現状である。申請者らはこれまで、乳腺上皮細胞の培養技術を構築し、細胞生物学的および分子生物学的解析を実施してきた。特に黄色ブドウ球菌毒素に対する乳腺上皮細胞の応答性に関する研究や、機能性タンパク質ラクトフェリンの誘導機構の分析については一定の知見を得ている。本申請課題の独創性は、乳腺上皮細胞と免疫担当細胞を主体とした"三次元ウシ乳腺感染モデル"を構築し相互の関連性を保持しながら、ウシ乳腺組織の免疫学的特性を解明することである。また、病原性微生物やその代謝産物がこれらに及ぼす影響を細胞生物学的および免疫学的手法で包括的・網羅的に解析することである。これら一連の研究は乳房炎防除に関する生産獣医療の発展に帰着し得る、多くの有効な基礎知見を包含すると考えられる。本申請課題では(1)乳腺感染モデルにおける免疫担当細胞の機能発現およびその制御機構の解明、(2)乳腺感染モデルにおける免疫修飾性タンパク質の誘導とその機能評価、について研究を実施した。好中球およびマクロファージは乳房炎病原細菌の直接刺激よりも、好中球-病原細菌-乳腺上皮細胞による感染モデルで強い反応を示した。同様の結果がマクロファージでも確認された。また、ラクトフェリン誘導については乳腺上皮細胞に対する乳房炎病原細菌の直接刺激より、乳腺上皮細胞.病原細菌-好中球でより強く分泌されることが確認された。また、サイトカイン関連遺伝子の発現増強も認められた。このことから、免疫担当細胞は乳腺上皮細胞とのクロストークによって、より効果的な機能発現を誘導している可能性が示唆された。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Journal of Veterinary Science
巻: 12 ページ: 191-193
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