研究概要 |
昨年度はカンピロバクター・ジェジュニがAcanthoamoeba polyphaga内で増殖する際に必要とする遺伝子を同定するために、約3600株からなるトランスポゾン変異体のライブラリーを作製し、各株のアメーバ内での増殖性を調べた。その結果、アメーバとの共培養後の培養上清中の菌数が野生株と比較して減少している変異株を10株得た。今年度はそれらの株のトランスポゾン挿入部位を決定した。 トランスポゾンの挿入が見られたのは、アミノ酸の生合成に関与する遺伝子(argG,hisDなど;3株)、プリンサルベージ回路に関与する遺伝子(purA1株)、アミノ酸代謝に関与する遺伝子(aspA;1株)、糖の異性化に関与する遺伝子(ga1A;1株)、損傷したDNAの修復に関与する遺伝子(adbD;1株)、物質の排出に関与する遺伝子(smr,lysE;2株)であった。また1株では鞭毛関連遺伝子(fliw)と自然形質転換関連遺伝子(comL)の中間にトランスポゾンが挿入されていた。PYG培地での増殖率はアミノ酸生合成に関与する遺伝子の変異株2株と糖の異性化に関与する遺伝子の変異株1株で低かった。その他の変異株はアメーバ内への取り込まれる菌数が低下しているか食胞内での生存能力の低下が生じているものと考えられた。今後は、上記の変異株のそれぞれに対するアメーバの取り込み動態を蛍光抗体法などを用いて詳細に検討して行くとともにアメーバ内での菌の経時的な生存率を調べる必要がある。
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