2010年6月~2010年10月の期間に、北海道内の放牧肥育農場(A農場)と放牧育成農場(B農場)の2カ所において、交雑肥育牛19頭(A農場)とホルスタイン育成牛20頭(B農場)を対象に、イベルメクチンポアオン製剤の通常量投与(イベルメクチン500μg/kg体重)によるFECR試験(Fecal egg count reduction test)を行った。試験はA農場で3回(放牧4週、12週、23週目)、B農場で1回(放牧13週)の計4回行い、駆虫薬投与時と投与2週後における糞便内線虫卵のEPG値から算定した虫卵減少率を基にイベルメクチン耐性の有無を判定した。その結果、線虫卵の減少率は、A農場の放牧4週、12週および23週目の試験でそれぞれ82%、36%および98%、B農場では13%を示し、両農場では昨年の青森県における成績と同様に8月上旬(放牧12、13週)の値が耐性の目安となる減少率(90%)を大きく下回った。検出された線虫卵は、いずれの農場においても形態による同定が困難な未同定線虫卵が全体の95%以上を占め、それらを培養して得た感染幼虫の遺伝子学的同定(PCR-RFLP法)に基づく未同定線虫卵の寄生種毎の減少率は、A農場の放牧12週でOstertagia Ostertagi 100%、Cooperia oncophora 32%およびC.punctata 22%、同B農場ではO.ostertagi 88%およびC.oncophora 7%を示し、青森県内の農場に続いてイベルメクチン耐性Cooperia属線虫の寄生が確認された。これにより、北日本の牛にイベルメクチン耐性線虫が広く存在する可能性が示唆された。なお、昨年度の感染幼虫の遺伝子学的解析でCooperia sp.とされた虫体は、今年度の子牛を用いた感染実験によりC.punctataと同定された。
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