研究概要 |
獣医療において使用される麻薬系オピオイドのフェンタニル、モルヒネ、レミフェンタニルの薬物動態およびオピオイド投与により生じる行動学的・生理学的変化を犬と猫で比較した。 フェンタニル、モルヒネの単回投与あるいはレミフェンタニルの短時間持続投与により犬では全個体が鎮静されたが、猫では一部の個体で鎮静状態を得ることができなかった。また、モルヒネ投与の副作用として犬で嘔吐が見られたが、猫には見られなかった。 薬物動態の解析に先立ち、高速液体クロマトグラフ質量分析法によるオピオイドと代謝産物の血中濃度測定法の検討を行った。われわれが以前に確立した測定系により、犬と猫の血漿中フェンタニル濃度の測定が可能であった。さらに過去の報告を基に手技を再検討した結果、犬と猫において血漿中のモルヒネおよび代謝産物であるM3GとM6G濃度を同時に測定することが可能であった。 2-コンパートメントモデルによる薬物動態解析の結果、フェンタニルの消失半減期、全身クリアランス、定常状態分布容積は犬で58分、66mL/kg/min、4584mL/kgであり猫では120分、34mL/kg/min、3190mL/kgであった。モルヒネでは犬で69分、96mL/kg/min、5279mL/kgであり、猫で78分、35mL,/kg/min、2843mL/kgであった。フェンタニルとモルヒネは猫では犬より消失半減期が長く、全身クリアランスが小さく、分布容積も小さいことが明らかとなった。モルヒネは人では鎮痛作用のあるM6Gと鎮痛作用のないM3Gに代謝されるが、今回の測定では犬で主にM3Gが検出され、猫ではM6GおよびM3Gはほとんどの個体で検出されなかった。
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