研究概要 |
1.先体反応におけるセラミド生成経路を明らかにするため,スフィンゴミエリナーゼの活性化を阻害する薬剤を使用したがイオノホアにより誘起された先体反応を阻害できなかった.他の反応経路(シクロオキシゲナーゼの活性化など)について検討中である. 2.鞭毛の超活性化運動の誘起とタンパク質チロシン残基のリン酸化状況:特に夏季に採取したブタ精子をcAMPアナログcBiMPSの存在下で培養し超活性化運動を誘起した場合,32kDaのタンパク質のチロシンリン酸化が,特に培養の初期に,強く発現した.このことは,このタンパク質は先体の損傷に伴ってリン酸化を受けることが知られおり,夏季に先体保有率が低下したという過去の報告と一致した. 3.CTC染色を試みたが,明確な受精能獲得精子(Bパターンを示す精子)の同定に至らなかった.引き続き,1年を通して精子のCTC染色を行い,異なる染色パターンの変化を追う予定である. 4.種々の異なる希釈液を用いて希釈・保存した精液を人工授精した結果,例数はまだ不足しているが,通常の希釈液(BTS-BDとする)の成分である重炭酸をHEPESに,あるいはEDTAをEGTAに置き換えた希釈液(BTS-HDあるいはBTS-BG)が,通常のBTS-BDに比べて,受胎率が高い傾向にあった.引き続き,人工授精を継続中である.一般精液性状は毎月の精液採取時及び,人工授精の目的で採取した時点で検査を継続中である. 5.BTS-HDにて希釈後保存した精子は,通常の希釈液(BTS-BD)を用いた場合より先体反応の誘起が低下することを示した.このことは,BTS-HD希釈液による精液の希釈・保存が,夏季に先体反応誘起が早まることによる受胎率低下を防ぐ手段となりうる可能性を示唆している.
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