研究概要 |
1.材料を継続採取中の個体(ブタ)の精液性状が悪化し使用困難となったため個体の継続使用を必要としない内容へ方向転換した. 2.脱塩したブタ精漿を添加した希釈液で精液を希釈・保存後精子性状を調べた結果,運動性が低下する添加濃度が存在し,先体反応が遅延すること,およびこれらの作用には精漿の個体差が大きいことが明らかとなった. 3.比較の目的でウシ精子を用い,受胎率低下の原因を検出するため先体の蛍光色素染色法の最適条件を検討し,従来のグルタールアルデヒド固定標本の検査法と比較した結果,固定・透過処理後FITC-PNA染色する方法が有効であるが,グルタールアルデヒド固定標本の方法も同様に有効であった.両方法は受胎率の正常および低下した個体の間で差を検出できなかったが,他に低受胎の原因があった為であるか技術的な原因であるかは区別できなかった. 4.比較の目的でウシ精液を用い,脱塩した精漿を希釈液に添加し精液を凍結保存した場合cAMPアナログcBiMPSにより誘起されるハイパーアクチベーションおよびカルシウムイオノホアにより誘起される先体反応がそれぞれ遅延されることが示された. 5.昨年より継続して検討した結果,シクロオキシゲナーゼ(Cox)I阻害剤により,カルシウムイオノホアにより誘起されるブタ精子の先体反応は抑制されたが,Cox IIの阻害剤により先体反応はむしろ増強された. 6.既存の希釈液BTS (BTS-BD),その重炭酸をHEPESに置換したBTS-HD,EDTAをEGTAに置換したBTS-BGおよび両者をそれぞれEGTAとHEPESへ置換したBTS-HGを用いてブタ精液を人工授精した結果,3年間の総計でBTS-HDおよびBTS-BGの受胎率が他よりも高い傾向にあった.このことから重炭酸とEDTAは一方のみ添加する方が両者とも添加あるいは置換するよりも有効であると考えられた.
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