レプトスピラ症は人と動物の共通細菌感染症であり、犬に致死的な疾患であるばかりでなく、公衆衛生上も重要な疾患である。申請者はこれまでに本症の疫学調査と検査法の開発を行ってきたが、臨床現場で実施可能な簡便かつ迅速な検査法は存在しない。そこで本研究では開業獣医病院でも実施可能なレプトスピラ迅速検査系の開発を目的として、レプトスピラ抗体検査用ラテックスビーズの開発を行っている。本年度はレプトスピラの5血清型培養株からそれぞれ蛋白を抽出し、これらを直径3μmのラテックスビーズにグルタールアルデヒド法で共有結合させた試薬を作成した。これらビーズを用いてレプトスピラ抗体陽性犬の血清と反応させたところ、icterohaemorrhagiae以外の4血清型では5-10分以内に陽性検体を検出できる系が作出可能であった。現在、検体数を増やしてそれぞれの血清型ビーズの感度と特異性を検討している。また、Microscopic agglutination test(MAT)における抗体陽性に関わる蛋白を同定することを目的として、レプトスピラ抽出蛋白に対してレプトスピラ陽性犬の血清を用いて免疫沈降を行ったところ、icterohaemorrhagiaeならびにhebdomadis抗体に対してそれぞれ特異的に反応すると予想されるいくつかの蛋白がそれぞれ確認された。今後、これら蛋白のアミノ酸解析により、それぞれの蛋白を同定する予定である。
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