研究概要 |
マイコプラズマ陽性の牛呼吸器複合性疾患(BRDC)21症例の肺胞洗浄液(BALF)および血漿中エンドトキシン活性値をマイコプラズマが陰性で呼吸器症状を呈していない20頭の子牛と比較した。その結果、BRDCのBALF中エンドトキシン活性値は97.12±170.61 EU/mLであり、対照群の2.38±2.68 EU/mLよりも有意に高値を示した(p<0.001)。ROC解析によりBALF中エンドトキシン活性値によるBRDCの診断能を評価したところ、BALF中エンドトキシン活性値が6.05 EU/mLよりも高値であればマイコプラズマ陽性BRDCと診断できる(p<0.001, AUC=0.933, Se=81.3%, Sp=84.6%)。また、BRDC子牛の血中エンドトキシン活性値は0.334±0.352 EU/mLであり、対照群の0.067±0.0184 EU/mLよりも有意に高値を示した(p<0.001)。従って、マイコプラズマ陽性BRDCでは、気管支内のエンドトキシン活性値が著増し、これが血中にも反映していた。従って、BRDCは呼吸不全に対する治療だけでなく、エンドトキシン由来の全身性炎症反応に対する治療が必要である。 高張食塩液(HSS)療法で治癒(n=57)した甚急性乳房炎症例の初診時における血清中エンドトキシン活性値は健常牛のそれと有意な差は認められなかったが、発症後1週間以内に死廃した予後不良牛(n=12)では健常および治癒群よりも有意に高値を示した。また、初診時に重度のショック症状を呈した20頭の甚急性乳房炎症例において、HSS療法で治癒した14頭は血漿中エンドトキシン活性値の有意な変動は認められなかったが、1週間以内に死廃した6頭は第2病日で活性値が著増した。従って、血液中エンドトキシン活性値のモニタリングは甚急性乳房炎の予後および治療効果の判定に有用である。
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