研究課題
本年度は犬の悪性黒色腫について、主にキナーゼ異常の有無を検索した。8種類の悪性黒色腫株化細胞を用いてキナーゼ阻害剤および転写因子阻害剤を含む分子標的薬21種の細胞増殖抑制効果を検討した。21種の分子標的薬のうち、オーロラキナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤(NFkB阻害剤)、EGFR阻害剤およびFLT3阻害剤は全ての細胞株において濃度依存性に腫瘍細胞の増殖を抑制し、IC50は1μM以下であった。特にプロテアソーム阻害剤による腫瘍の抑制効果は顕著であり、IC50はく0.3μMであった。当初は犬の悪性黒色腫においてチロシンキナーゼ異常が重要な発生メカニズムであると想定していたが、チロシンキナーゼ随害剤のみならずセリン・スレオニンキナーゼ阻害剤とプロテアソーム阻害剤でも増殖抑制が見られたことは大きな発見であった。とくにNFkBを阻害するプロテアソーム阻害剤のIC50が著しく低いことから、犬の悪性黒色腫細胞はNFkBの活性化に強く依存して生存あるいは増殖する可能性が考えられた。そこで犬の悪性黒色腫細胞におけるNFkBの活性化状態を評価したところ、NFkBが著しく活性化していることが示され、さらにこの活性化はin vitroでプロテアソーム阻害剤を添加することにより抑制されることが明らかとなった。以上の結果に基づいて、犬の悪性黒色腫細胞をヌードマウスに移植し、腫瘍増殖におよぼすプロテアソーム阻害剤の影響をin vivoで評価した。悪性黒色腫細胞移植ヌードマウスにおいてプロテアソーム阻害剤は比較対象群に比べて有意に腫瘍の増殖を抑制した。犬の悪性黒色腫の増殖にはチロシンキナーゼ異常が関与している可能性が示唆されたが、それ以上にNFkBの異常な活性化は重要な役割をはたしていると考えられた。本研究から、犬の悪性黒色腫において異常に活性化したNFkBが治療標的となる可能性が示された。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)
Veterinary Journal
巻: (印刷中)
doi:10.1016/j.tvjl.2011.10.027
Veterinary Immunology and Immunopathology
巻: 142 ページ: 101-106
doi:i0.1016/j.vetimm.2011.04.002
BMC Res Notes
巻: (in press)
doi:10.1186/1756-0500-5-173