研究概要 |
今年度は,主に我が国のバイオ燃料生産の持続可能性評価に適用できる具体的手法の選定作業に従事した。その結果,「環境経済統合勘定(SEEA)」を適用し,ここから得られる情報より世界エネルギーパートナーシップ(GBEP)で策定中の持続可能性指標を評価することが望ましいとの結論を得た。しかしながら,SEEAは環境と経済に関するデータは整理できるものの,社会的なデータについては評価できず,GBEPで議論されている環境・経済(+エネルギー安全保障)・社会という3つの柱での持続可能性評価には不十分であることが判明した。そこで,環境・経済・社会の3側面を捉えられる持続可能性指標としては,「持続可能経済福祉指標(ISEW)」を適用することとした。ただし,ISEWはマクロ的な持続可能性指標とはなりうるものの,主に消費・支出側面に焦点を当てた指標であるため,バイオ燃料の生産側面に適用するには手法の改良が必要という課題が明らかになった。 また、北海道空知管内を対象にバイオエタノール用米の生産可能量について線形計画法を適用した試算を行った。その結果、バイオ米は秋小麦収量が低い地域で,秋小麦の代わりに入る可能性があること。バイオ米は食用米田植え期の労働がかぶるのを避けるために直播にする必要があること。一定規模の面積(少なくとも13ha程度で北海道平均11ha強以上の面積が必要)がないとバイオ米が入る余地がないことが明らかとなった。分析上の問題点としては、食用米の比例利益設定の問題、転作における連作制約を考慮していない点、費用や労働時間の係数データは市町村別にできない点などがあり、改善方向としては、北海道の平均的な水田経営モデルを作成し,転作パターン,規模拡大などのシナリオ分析を行う必要性があることがあげられる。
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